歌舞伎町ぼったくり|ヤミ金に対する警察の対応とパラレルに考えると・・

歌舞伎町ぼったくり|頼もしい刑事の話

最近、ある方から、興味深いお話をお聞きしました。
その方の部下がヤミ金からお金を借りてしまい、ヤミ金からの取り立てが会社にまで何度もかかってきたそうです。
その方は、会社の窓口としてヤミ金との対応にあたっていたことについて、警察署に出向いて、事情聴取を受けたそうなのですが、そのときの刑事の対応がなかなかふるっていたそうなのです。

歌舞伎町ぼったくり|刑事はヤミ金に対してこんな対応をしていた

数年前の出来事です。
その方が警察署に出向いた際、刑事さんは目の前で、ヤミ金に電話をかけて、まずは名乗ったうえで、折り返すように伝えてすぐ電話を切ってしまったそうです。
すると、すぐにヤミ金側から折り返しがあり(あちらも素直ですね)、するとその刑事は、電話の向こうの人間に対し、

・おい、お前のところ、何やってるのかわかってんのか。
・違法金利だろう。今たまたま事件化されてないが、対応次第ではすぐやるぞ。
・どうするんだ。
(とまあ、このような言葉をもう少し乱暴にした感じの)等々の言葉をばばばぁっと伝えて、一気に話をつけてしまったとのことなのです。

おぉ、なんと頼もしい刑事さん。
おぉ、なんと頼もしい警察のヤミ金対応。

歌舞伎町ぼったくり|刑事はぼったくり被害に対して何をしていたのか

2014年7月ころから2015年6月ころまで激増の一途を辿った歌舞伎町ぼったくり被害の実態については、当ウェブサイトでも被害者からの悲痛な叫びとともにご紹介してきたとおりなのですが、ぼったくり被害を受けたと歌舞伎町交番や新宿東口交番や新宿警察署に助けを求め(被害届、告訴状の提出を訴えた)被害者の方々に対し、被害者の目の前で、店側の人間に電話をして、店側の人間を一喝して、被害発生についての警察の認識を伝えて、このままじゃただではおかないぞといった、上記ヤミ金対応にあたった刑事さんのような対応をしてくれた警察官は、私の知る限り、皆無です。

なぜ、ヤミ金とぼったくり被害とでは、警察対応にこんなにも大きな違いがあるのでしょうか。

歌舞伎町ぼったくり|正義感がすべてではないということ

身も蓋もない話ですが、ヤミ金に対して強気な対応をすぐにとってくれた上記のような刑事さんが、とくに正義感にあふれているわけではないと思います。おそらく、同じ課のどの刑事であっても、同じ対応をしてくれたはずです。
では、ヤミ金に対応してくれた部署のすべての刑事がみな正義感にあふれていたかというと、これまたそういうわけではない、というのが私がここで言いたいことです。
こんなこというと、警察で働いている方々から苦情がきそうなのですが、要はマニュアル対応なのです。
ヤミ金業者は、違法業者だから、被害者を徹底的に救済するやり方でいいのだ、という国民的合意がある。最高裁判決がでて、金利に関する法的規制が次々と行われて、それでも営業をしているようなヤミ金業者は徹底的に取り締まっていくべき対象なのだ、というお墨付きが、警察トップからの方針として与えられている現状だから、現場の刑事がそのように対応することができるというただそれだけなのです。
もちろん、刑事個人個人の正義感、交番のお巡りさん個人個人の正義感を否定するものではありません。
刑事さんもお巡りさんも、人より正義感が強い人が、警察官という職業を選択している。
きっとそうだと思います(そうだと信じたい)。
ただいくら、警察官個人の正義感が強くても、自称被害者の被害申告に対して、正義感を全開にして、次々と加害者に対する追求をしてくれるなんてことはあり得ないのです。まわりの警察官がやっていないのに、自分だけがそのような暴走した正義感を発揮してよいものか不安になるのが当然です。どうやらまわりの警察官は、民事不介入だとか、それは家庭の問題だとかいって、ちょくちょく被害者からの相談を聞き流して終わりにしている。それを自分だけが、被害者の声を真に受けて、加害者とやりあってしまったら、それは公平な警察官としてはあるまじき行動だよな。いきすぎはまずいよな。といった思考回路で、現場の刑事や警察官が、被害者救済に及び腰になるということは、必然とまではいわないが、やむを得ない面もある(たぶん)。

歌舞伎町ぼったくり|社会問題として認知されるかどうか

宇都宮健児弁護士の著書を読めばよくわかりますが、今から40年以上前は、サラ金による異常な高金利の負担や、昼夜問わず自宅にも職場にも借金取りがやってくるような過酷な取り立てに苦しむ人達が、誰からも見向きもされず、もう首をくくるしかない、一家離散するしかない、というような状態にまで追いつめられておりました。サラ金が社会問題として認知されていくのは昭和40年代の後半以降で、当初は、弁護士ですら救済に立ち上がっていませんでした。
弁護士ですら救済に動いていないのですから、警察に助けを求めても、お金の貸し借りは民事でしょう、民事不介入でしょうといった対応をされるのが関の山で、本当に助けてくれる存在自体がいない社会状況でした(そのときの被害者たちの苦悩を思うと、言葉がありません。助けを求めても、助けてもらえないという現実、助けてもらえないのだという失望、じゃあこれ以上どうすればいいのかという恐怖)。
それが、変わっていったのは、宇都宮健児弁護士らが中心となって、昭和50年代、被害者救済に乗り出し、ヤミ金相手の訴訟を繰り返し、その違法な実態について、勝訴判決を積み重ねていったからです。そのような流れの中で、ヤミ金を規制する立法、法改正も繰り返され、今では多くの弁護士がその問題に取り組むようになりましたし、今では、当時ほどの違法業者の興隆はありません。
これは本当に素晴らしい被害者救済活動(ヤミ金業者との闘争)の成果なのですが、私が本稿でお伝えしたいのはですね、ヤミ金の被害者ですら、わずか40年ほど前には、弁護士に被害を訴えても、警察に救済を求めても、誰も彼らのことを被害者として扱ってくれなかった、助けてくれなかったという地獄があったのだよということなのです。

歌舞伎町ぼったくり|ヤミ金被害とぼったくり被害をパラレルに考える

これをぼったくり問題にスライドして考えてみます。
2014年7月~2015年6月までの歌舞伎町ぼったくり被害者も、40年前のヤミ金被害者と同じような立ち位置で、誰に被害を訴えても同情されない、助けてもらえない、なんだよう、誰も自分を助けてくれないのかよう、あんなお店にひっかかった自分が悪かったのかよう。。といって、ひとり泣き寝入りを強要されておりました。
交番に救いを求めても、はい民事不介入(むしろ無銭飲食はいけないと言われることさえ珍しくなかった。)、警察署に被害届(告訴状)を提出にいっても、はいこれは犯罪じゃない、犯罪の証拠がない、つまり民事だから不介入などといった、私からいわせると、理屈も正義感もなにもあったものではない説明をされて、泣き寝入りさせられております。数多の被害者の怨念のような叫びを、私は電話、メール、対面を通じて、何度、お聞きしたことか。。。
なぜここまで激増していった歌舞伎町ぼったくり被害について、交番にいる現場の警察官、本署につとめる警察官の誰もが、具体的に店側と対峙して追及するような行動にならなかったものか。
それは、等しく正義感が欠如していたというと警察官に酷ですので、そこまでは言いませんが(言っている)、少なくとも、歌舞伎町ボッタクリは民事だから不介入、被害客も酔っ払っているからどっちもどっちだから被害客に肩入れしないように、という警察署内の統一的な見解、全警察官の共通認識があったからであるとしか思えないのです。
実際、2015年6月1日を境に(厳密には5月30日前後か)、警視庁が、新宿歌舞伎町のぼったくり被害については、交番に救済を求めに来た被害客については、すべて店側の人間から切離して、お金を払わせることなく帰宅させるように(要は救済するように)という方針に一大転換を行いました(まさに180度方針を変えたのです)。
すると、交番にいる現場のお巡りさんは、数日前までは、どれだけ被害を訴えても、交番まできた被害客の味方をして、店側を一喝して被害客が無事帰宅できるようにしてくれるようなことなど一切なかったにもかかわらず、その日を境に、ガンガン被害客を助けてくれるようになったのです。
この交番の対応の変化は、警察官の行動原理というものが、警察官個人の正義感や被害救済への熱い思いなどというものとは、全く別のところで決められれていることを端的に表すものとして、私は大変興味深く観察した次第です。
いくら警察官の正義感に訴えたところで、個別の警察官が犯罪被害者であるはずの自分を助けてくれるとは限らない。
警察組織の行動原理とは、そんなところにはないということです。

歌舞伎町ぼったくり|被害者が被害者として扱われる日がくるために

犯罪被害者といえども、犯罪被害者として扱ってもらえないというこの理不尽。
サラ金被害のように、いずれ社会問題化することであっても、その被害黎明期においては、同じ被害実態があったとしても、社会問題化されていない(警察や弁護士すら問題視していない)時期というものがあり、この時期を突破して社会問題として大きく共有できるようになるまでは、数えきれないほどの被害者が救われずに放置されたものです。
ぼったくり被害についても全く同様で、2014年7月~2015年6月までの1年間に交番に助けを求めた被害者たちが見殺しにされた現実については、いつまでも忘れてなならないと思っています。
どんな犯罪被害であれ、被害者があきらめたら終わりです。どうか一人でも諦めず、どれだけ小さな声であっても声をあげつづけることが大切です。
あきらめない被害者が、戦う被害者が、世の中を変えていきます。

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青島 克行

青島 克行弁護士・保育士・宅地建物取引主任者

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静岡県静岡市出身
昭和50年9月17日生
 弁護士(東京弁護士会、登録番号31776)
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